公正証書遺言とは
- 公証役場で公証人が作成する遺言書
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遺言者が2人以上の証人の立会いをつけて、遺言の内容を口頭(文書)で伝え、これを公証人が筆記し、その内容を読み聞かせて筆記が正確なことを確認した上、署名・押印します。この公正証書遺言の利点として、次のようなことがあります。
- 原本が公証役場に保管されるので、遺言書の紛失・偽造・変造のおそれがありません。法律上の保存期間は20年ですが、遺言者が100歳に達するまでは保管されるのが一般的です。紛失した場合も再発行してもらうことができる、安全・確実な遺言です。
- 遺言執行に際して、家庭裁判所の検認1が不要です。自筆証書遺言や秘密証書遺言は検認が必要となり、家庭裁判所に検認してもらうために、相続人確定のための戸籍謄本・除籍謄本など相当の証明資料を収集しなければなりません(遺産分割協議を行うときも同様)。また、検認は相続人全員が同時に立ち会う必要があります(ただし欠席者がいても検認は行われます)。
※1 検認
家庭裁判所が本人の遺言書であるかどうかを確認する手続きのこと。自筆証書遺言の場合、遺言書の保管者や発見者は家庭裁判所に届けなければならない。封筒に入った遺言書は開封せずに家庭裁判所に届ける。事前に開封された場合は、遺言書の効力には影響しないが、5万円以下の過料の処分を受ける。また、裁判所によって事務処理の期間は異なるが、裁判所に検認の申し立てをしてから検認期日まで1~2か月は待たされることとなり、当然それまでは不動産の名義変更や銀行預金の解約といった手続きも行えない。
必要資料
- お客様の出生から現在までの戸籍謄本
- 相続人の出生から現在までの戸籍謄本
- お客様の実印および印鑑証明書
- 相続人以外の人に遺贈する場合は、その方の住民票
- 寄付を行う場合は、その法人の登記簿謄本
- 遺産に不動産がある場合は、その不動産の登記簿謄本および固定資産評価証明書または固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書
- 預金通帳のコピーや保険証券のコピー等
- 証人予定者2名の氏名、住所、生年月日、職業を明記したもの
公正証書で遺言作成
- 法的に間違いのない遺言を作成できる
遺言書は、ただ思うようになんでも書けばよいというものではありません。
きちんと法的な知識を持ったうえで作成しないと、遺言書とは認められない、ただの紙切れになってしまう可能性があります。公正証書で作成すれば、私たちや公証人といった法律のプロが作成するので、そのような心配がありません。 - 文字を書くことができなくても口頭で可能
公正証書遺言は公証人が作成するので、ご自身で文字を書くことができなくても、書きたい内容を公証人に口頭で伝えれば作成してもらえます。 - 相続トラブルの発生を抑止できる
自筆証書遺言の場合は、どうしても信憑性が薄くなってしまいます。
「本当に本人が書いたのか?誰かに書かされたんじゃないの?」
「この遺言書の日付当時は、既に認知症で遺言書なんて書ける状態ではなかった」
といった感じです。
この遺言書の効力を争うために裁判!なんてことになると大問題です。
その点、公正証書遺言であれば、公証人・承認の立会いのもとに厳格に作成されるので、争いになる可能性は低くなります。 - 家庭裁判所で検認の手続きをしなくていい
検認の必要がないというのも大きなメリットです。
自筆証書遺言であれば(自筆証書遺言を法務局保管制度を利用すれば検認は不要ですが、それ以外の場合には検認を受けなければなりません)、遺言者の死亡後、遺言書を開封せずに家庭裁判所へ必要書類をそろえたうえで持っていき、手続をしなければなりません。
遺言書発見から検認の手続きを終えるまでは、2~3カ月程度はかかると考えておくのが良いでしょう。公正証書遺言であれば、そのような手続きは不要なので、そのまますぐに公正証書遺言を使って相続手続きを進めていくことができます。 - 偽造や紛失のおそれがない
公正証書遺言は、遺言書の原本は公証役場に保管されるので、紛失や偽造されるおそれがありません。また、「遺言書検索システム」という便利なシステムもあるので、相続人等であれば公証役場で故人の遺言書があるかどうか調べてもらうこともできます。